冒険彗星

文句ばっかり書くけど俺は悪くねえ、糞害悪オタクに書けって言われたんだ

本①

最近また結構本を読むようになってきたので、メモとして残すことにした(兄が毎週図書館に行っているので、そのタイミングで注文を入れることで猛暑の中外出せず、無料でインプットが出来てしまう無敵環境が構築されている)。

言葉にすることで自己分析も兼ねている 自分が好きなことを言葉にしたい

 

『華竜の宮』上田早夕里

地殻変動によって260m海面が上昇し社会が陸上と海上に分かれた世界で、海上民の折衝を務める外交員である青澄を、そのアシスタントであるマキの視点から描いた作品

カタストロフィ・人間とAI・政治外交ドラマという3つの異なるジャンルを取り扱いながらも、扱いきれてないという印象が全くなく、それぞれが繋がっているために必然性すら感じられる

海面上昇に適合する為に、「人間も含めた」生命体の遺伝子改造が許可された世界に産み落とされた禁忌の産物が徹底的に描写されており、

「これどういうこと?もしかして」と抱いた嫌な予感が、後のページでそれを超えるような吐き気を催す形で明らかにされる瞬間が、最高

有識者会議のシーンは、あらゆる発言が「えぇ...」というドン引きの感情に終始する

『華竜の宮』というタイトルの意味も、竜宮城などから想像されるような美しい海中の世界などとは一切関係のない、この詰んだ世界が破局する様の、別の意味での美しさを表す言葉であると気付いた瞬間の、「オワ~~~!!w」という感情

一方で「魚舟」と呼ばれる海上民の暮らしを支える生物は「アバター」の世界のような雄大さも感じさせ、海上での生活をしてみたいとも思わせられる

 

終始一貫して(良くも悪くも)視聴覚に訴えかける描写が豊富で、一つ一つに想像力を働かせながら読むだけでも楽しい作品だと思います

 

先日FFと通話している時に、「選択を間違え続ける話」が結構好きという話をしたが、この作品の世界観は、まさにそれ

多分自分はバッドエンド自体が好きな人間ではないのだけど、積み重ねたものを後に残す、あるいは敗北を直視して「ゲームセット」に向けて心を整理する人間の営みの眩しさみたいなものを見るとひどく辛くなると同時に美しいと思うタイプの人間

前者は「チ。」や「Dr.Stone」、後者は「三月のライオン」や「はねバド!」なんかが該当する 「ローグ・ワン」なんかは両方該当すると思う、スターウォーズ関連作品では一番好きだ

 

 

 

『コンプレックス・プリズム』最果タヒ

小説家・詩人(らしい)(他の作品を知らない)作者のエッセイ集

本屋で何となく表紙買いした

 

自分が捻くれた精神性の持ち主であることは今更言うまでもないが(恐らく作者もそうであるのだろう)、そういった全体の性格を構成するそれぞれの小さなコンプレックスを拾い上げてみて、それにまつわる具体的なエピソードを、少し抽象的な感情表現と口語表現で吐き出している

その表現形式のおかげで音楽の歌詞ほど「皆にもこんな(フワッとしたマイナスな)経験あるだろ?」みたいな最大公約数み(感じて下さい)が薄く、「これは私の話です!」という感覚が強い

(任意のアーティスト名)のMVのコメント欄では

「辛い時に頑張れって言うんじゃなくて傍に寄り添ってくれている感じ」

というコメントがしばしば観測されるが、この本は

「砂浜や河川敷でクソ叫んでる人を見かけて、実際に真似はしないけど100%人がいないところだったらやってみたいな、と思うような感覚」だと感じた

ネガティブなクオリアを自分はきちんと言葉にはしないし、そもそもこんなに綺麗にはできないんだけど、見本を見せてくれているような

 

「ブルーピリオド」なんかはこっち寄りだぜ

 

今回は以上 次回は他人の労力で手に入れた本シリーズの『テスカトリポカ』になりそうです

 

自分は持っているマンガを他人に開示した場合、恐らく「スポ根好き」とかに分類される気がしている が、実際にはそこが本質ではないんだろうな感じている

弱虫ペダル」や「灼熱カバディ」、「送球ボーイズ」や「ドドドドドッジ」なんかは、「おもれ~(鼻ホジ)」って感じで、人生における思想が揺さぶられるような感情はなかったので、試合そのものの熱さみたいなものは本質ではなくて、キャラクターの哲学が明らかになる、あるいはそれまでに積み重ねてきたものを発揮する舞台としての試合を求めていて、その説得力がある物語が大好きなんだと思う 蛇足終わり